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びまん性脱毛症のセルフチェック|抜け毛の毛根状態と本数で診断するサイン

びまん性脱毛症のセルフチェック|抜け毛の毛根状態と本数で診断するサイン

びまん性脱毛症は、頭髪全体が均一に薄くなる症状で、多くの女性が悩む脱毛症の一つです。早期発見のためには、日々の抜け毛の本数と、抜けた毛の「毛根の状態」を観察することが大切です。

正しい知識を持ってセルフチェックを行うことで、現在の進行状況を把握し、適切な対策へとつなげることができます。

本記事では、毛根の形状や色の見分け方、注意すべき抜け毛の本数について詳しく解説します。自分の髪の状態を知り、不安を解消するための第一歩を踏み出しましょう。

目次

びまん性脱毛症の特徴と他の脱毛症との違いを理解する

びまん性脱毛症は特定の部分がハゲるのではなく、頭髪全体の密度が低下します。地肌が透けて見えるようになるのが最大の特徴であり、円形脱毛症などとは明確に区別されます。

頭髪全体のボリュームダウンがサイン

びまん性脱毛症において最も顕著なサインはヘアスタイルが決まらなくなることです。以前に比べて髪の立ち上がりが悪くなったり、分け目が目立つようになったりします。

これは一本一本の髪が細くなり、ハリやコシを失う「軟毛化」が頭部全体で進行しているためです。局所的な脱毛ではないため、初期段階では気づきにくいかもしれません。

しかし、ポニーテールにした時の束の太さが以前より細くなったと感じる場合は、症状が進んでいる可能性があります。

他の脱毛症との見分け方

脱毛症にはいくつかの種類があり、それぞれ原因や対処法が異なります。自分がどのタイプに当てはまるのかを判断するために、特徴を整理して理解することが大切です。

脱毛症の種類の違い

脱毛症の種類脱毛の特徴と進行パターン主な対象層
びまん性脱毛症頭部全体が均等に薄くなる。境界線があいまいで、徐々に地肌が透ける。主に中高年の女性だが、全年齢で起こりうる。
円形脱毛症10円玉サイズなどの円形や楕円形に、境界がはっきりと毛が抜ける。年齢・性別問わず発症する。
牽引性脱毛症ポニーテールなど、髪を強く結ぶ部分や分け目の生え際が薄くなる。長髪の女性や、常に同じ髪型をしている人。

特に円形脱毛症のような突発的なものと、びまん性脱毛症のような慢性的なものでは、対応が大きく異なります。ご自身の抜け方と照らし合わせて確認してください。

発症年齢と進行スピードの傾向

一般的に、びまん性脱毛症は30代後半から40代以降の女性に多く見られます。ただ、近年では過度なダイエットやストレスが原因で20代で発症するケースも増えています。

進行スピードは比較的緩やかで、数ヶ月から数年かけて徐々に薄くなっていきます。そのため、「なんとなく髪が減った気がする」という違和感を放置しないことが鍵です。

正常な抜け毛と異常な抜け毛の本数を確認する

髪のヘアサイクルにおいて、1日あたり50本から100本程度の抜け毛は正常範囲内です。しかし、200本を超えるような状態が続く場合は、びまん性脱毛症の進行が疑われます。

1日の正常な抜け毛の目安

健康な頭皮環境であっても、1日に約50本から100本の髪の毛が自然に抜け落ちます。これは成長期を終えた髪が、新しい髪に押し出される形で抜けるためです。

シャンプー時に数十本抜けると驚くかもしれませんが、全体の約6割から7割はシャンプー時に抜けると言われています。排水溝にたまる毛を見て過度に心配する必要はありません。

ただし、明らかに100本を大きく超える抜け毛が連日続くようであれば、一度立ち止まって警戒する必要があります。

異常な抜け毛を見極めるポイント

本数だけでなく、どのようなタイミングで抜けるかも重要な判断材料です。枕元に落ちている毛が以前より明らかに増えたと感じることはないでしょうか。

あるいは、手ぐしを通しただけでパラパラと数本抜ける、といった状況は、毛根が弱まっている証拠です。成長しきる前に抜けてしまう異常脱毛が起きている可能性が高いと言えます。

抜け毛本数の危険度目安

1日の抜け毛本数判定と状態推奨される対応
50本〜100本正常範囲内現状のヘアケアを継続し、生活習慣を維持する。
100本〜200本要注意(季節要因の可能性あり)秋口であれば様子を見る。それ以外なら頭皮ケアを見直す。
200本以上危険信号(異常脱毛の疑い)長期間続く場合は、専門機関への相談を検討する。

季節による抜け毛の増減

抜け毛の本数は一年を通して一定ではありません。特に秋(9月から11月頃)は、夏の紫外線ダメージの蓄積などで、抜け毛が一時的に増える傾向があります。

この時期には1日に200本近く抜けることもありますが、一過性のものであることが多いです。季節の変わり目以外で急激に抜け毛が増えた場合は、ヘアサイクルの乱れを疑いましょう。

毛根の形状と色でわかる頭皮の健康状態

毛根の形や色は、髪が抜けた原因や頭皮の栄養状態を雄弁に物語っています。健康な抜け毛は根元が白く丸いですが、黒く尖っている場合は栄養不足や成長不良のサインです。

健康な抜け毛の毛根「棍棒毛」

正常なヘアサイクルを経て寿命で抜けた髪の毛根は、「棍棒毛(こんぼうもう)」と呼ばれます。マッチ棒のように根元が丸く膨らんでおり、色は白っぽいのが特徴です。

この形状であれば、髪は十分に成長してから抜けたことを意味します。セルフチェックで大多数の抜け毛がこの形状であれば、過度に心配する必要はありません。

危険なサイン1:毛根が黒い、または小さい

毛根が白くなく黒っぽい場合、あるいは膨らみがほとんどなく細くなっている場合は注意が必要です。

これは、髪が成長途中で栄養供給を断たれ、強制的に抜けてしまったことを示唆しています。血行不良や栄養不足により、毛母細胞の活動が低下している可能性が高いです。

びまん性脱毛症の初期段階でよく見られる兆候ですので、見逃さないようにしてください。

毛根の状態診断表

毛根の見た目状態の診断考えられる原因
マッチ棒のように丸く白い健康(棍棒毛)正常なヘアサイクルによる自然脱毛
膨らみがなく、細く尖っている栄養不足・萎縮血行不良や円形脱毛症の兆候、またはびまん性脱毛症の進行
全体的に黒く、形がいびつ成長期脱毛ホルモンバランスの乱れや強いストレスによる成長阻害

危険なサイン2:毛根に白い付着物がある

毛根の周りに白くベタついた塊が付着している場合があります。これが「毛根鞘」と呼ばれる組織の一部であれば問題ありません。

しかし、脂っぽい塊である場合は皮脂の過剰分泌により毛穴が詰まっている可能性があります。毛根から細長いしっぽのようなものが出ている場合も、毛根の萎縮を示すサインです。

鏡を使って確認する視覚的セルフチェック

抜け毛の分析に加え、鏡を使って頭頂部や分け目の変化を客観的にチェックします。分け目が以前より広がっていないか、地肌の透け感がないかを確認することが重要です。

分け目とつむじの広がりを確認

以前よりも分け目の白い部分が太くなっていないかを確認します。健康な状態では分け目の地肌は細い線のように見えます。

びまん性脱毛症が進行すると、分け目がクリスマスツリーの枝のように広がって見えることがあります。つむじ周辺の地肌が透けて見える場合も同様です。

つむじの渦巻きがはっきりしなくなっているなら、周辺の髪が細くなっている証拠と言えるでしょう。

視覚チェックリスト

  • 分け目の地肌が以前より目立つようになり、幅が広がっている
  • ポニーテールにした時の髪の束が、以前の半分くらいの太さに感じる
  • 頭頂部の地肌が照明の下で透けて見える
  • スタイリングをしてもトップのボリュームが出ず、すぐにペタンとなる
  • 頭皮の色が青白くなく、赤みがかっていたり茶色っぽくくすんでいる
  • 短い切れ毛やアホ毛が表面に多く目立つようになっている

生え際と全体のボリューム感

前髪のセットが決まりにくくなったり、額の生え際(産毛)が薄くなったりしていないかを確認します。髪をかき上げた時に、地肌がスカスカして見える感覚も重要なサインです。

髪全体のハリやコシがなくなり、ペタッとしてボリュームが出ない状態は、注意が必要です。毛髪内部のタンパク質が減少し、髪自体が痩せていることを示しています。

頭皮の色と硬さ

健康な頭皮は青白く、適度な弾力があります。しかし、赤みを帯びている場合は炎症を起こしており、茶色っぽい場合は血行不良や酸化した皮脂がたまっている可能性があります。

また、頭皮を指で動かそうとしても硬くて動かない場合は、血行が悪く、毛根に十分な栄養が届いていない状態です。

生活習慣に潜む脱毛リスクを見直す

びまん性脱毛症の原因の多くは、日々の生活習慣に潜んでいます。無理なダイエットによる栄養不足や、睡眠の質の低下は、直接的に髪の成長を妨げる要因となります。

過度なダイエットと栄養不足

短期間で体重を落とすような無理なダイエットは、髪にとって大敵です。食事制限によりタンパク質やミネラルが不足すると、体は生命維持に重要な臓器へ優先的に栄養を送ります。

その結果、髪への栄養供給は後回しにされてしまいます。特に髪の主成分であるケラチンの合成に必要なタンパク質と亜鉛の不足は、直ちに抜け毛につながります。

髪の成長を妨げる栄養欠乏

不足しがちな栄養素髪への影響多く含まれる食品
タンパク質髪の毛の材料そのものが不足し、細くもろい髪になる肉、魚、卵、大豆製品、乳製品
亜鉛新しい細胞の分裂が進まず、髪の伸びが遅くなる牡蠣、レバー、ナッツ類、牛肉
ビタミンB群頭皮の代謝が落ち、皮脂バランスが崩れやすくなる豚肉、レバー、ほうれん草、バナナ

睡眠の質と成長ホルモン

髪の成長やダメージの修復は、主に寝ている間に行われます。特に「成長ホルモン」が多く分泌される入眠後の深い眠りの時間が重要です。

慢性的な睡眠不足や浅い眠りが続くと、髪が十分に育つ時間が奪われ、細く弱い髪しか生えてこなくなります。

就寝前のスマートフォンの使用などは睡眠の質を低下させ、自律神経の乱れを引き起こします。これが頭皮の血流悪化を招く原因となるのです。

喫煙と飲酒の影響

タバコに含まれるニコチンは血管を収縮させる作用があり、頭皮への血流を著しく阻害します。また、過度なアルコール摂取も避けるべきです。

アルコールを分解するために、体内の亜鉛やビタミンが大量に消費されてしまうからです。髪の成長に必要な栄養素が奪われ、結果として髪の成長が妨げられることになります。

女性ホルモンの変化と加齢の影響を知る

女性の髪の量は、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌量と密接に関係しています。更年期や出産後など、ホルモンバランスが大きく変動する時期は、特に抜け毛が増えやすくなります。

出産後の分娩後脱毛症

妊娠中は女性ホルモンが増加するため、本来抜けるはずの髪が抜けずに成長し続けます。しかし、出産を機にホルモンバランスが一気に通常の状態に戻ります。

維持されていた髪が一斉に休止期に入り、大量に抜け落ちるのです。これは一時的なものであり、通常は半年から1年程度で自然に回復します。

ただし、高齢出産や育児ストレスが重なると、そのままびまん性脱毛症へと移行することもあるため注意が必要です。

更年期によるエストロゲンの減少

閉経前後の更年期(40代後半〜50代)に入ると、卵巣機能の低下によりエストロゲンの分泌が急激に減少します。

その影響で、相対的に男性ホルモンの作用が強まったり、髪の成長期間が短縮されたりします。今まで太かった髪が細くなり、全体的にボリュームが減るのはこのためです。

加齢による変化は避けられないものですが、適切なケアによって進行を緩やかにすることは可能です。

ホルモンバランス変動のチェックリスト

  • 現在、妊娠中または出産後1年以内である
  • 生理不順が続いている、または無月経の状態である
  • 40代半ばを過ぎ、更年期の症状(ほてり、イライラなど)を感じている
  • 最近、ピルの服用を中止した、または種類を変更した
  • 過度なストレスにより、自律神経やホルモンバランスの乱れを感じている

ピルの服用中止による影響

経口避妊薬(ピル)を服用している間はホルモンバランスがコントロールされています。しかし、服用を中止すると一時的にバランスが崩れ、抜け毛が増えることがあります。

これも分娩後脱毛症と同様の仕組みで起こるものです。体が新しいホルモンバランスに慣れるまでの一時的な症状であることが多いでしょう。

専門機関への相談を検討すべきタイミング

生活習慣の改善やセルフケアを行っても効果が見られない場合は、専門家の力を借りるべきです。自己判断を続けず、進行度合いに応じて適切なクリニックを受診しましょう。

セルフケアの限界を見極める

育毛剤やシャンプーの変更といったホームケアは、頭皮環境を整える予防的な意味合いが強いものです。すでに進行してしまった脱毛症を劇的に改善するには限界があります。

特に、毛根が完全に萎縮してしまっている場合や、ホルモンバランスの治療が必要な場合は、医療機関での治療が不可欠です。

3ヶ月から半年ほどセルフケアを続けても効果が実感できない場合は、次のステップへ進むことをお勧めします。

皮膚科と専門クリニックの違い

一般の皮膚科は、頭皮の炎症や湿疹などの皮膚トラブルを治すのが専門です。そのため、脱毛症治療の選択肢は限られていることが多いのが現状です。

相談先の選び方ガイド

相談先特徴とできること向いている人
一般皮膚科保険診療が基本。頭皮の痒み、フケ、炎症の治療。頭皮に明らかな炎症や湿疹がある人。
薄毛専門クリニック自由診療が中心。薬の処方、注入治療、詳細な検査。本気で発毛させたい人、原因を特定したい人。
婦人科更年期障害の治療、ホルモン補充療法。更年期症状が強く、それに伴い抜け毛が増えた人。

一方、薄毛治療専門のクリニック(FAGAクリニックなど)は、マイクロスコープによる詳細な診断や血液検査による原因特定を行います。

内服薬や外用薬、メソセラピーなどの多角的な治療を提供しています。より本格的な発毛を目指すのであれば、専門クリニックを受診するのが近道です。

受診時に伝えるべき情報

医師の診察を受ける際は、いつ頃から抜け毛が気になり始めたかを明確に伝えます。家系に薄毛の人はいるか、最近大きなストレスがあったかなども重要な情報です。

また、現在服用している薬やサプリメントがある場合は、飲み合わせや副作用の確認のために必ず申告してください。

Q&A

びまん性脱毛症は完治しますか?

早期に対策を始めれば、改善する可能性は十分にあります。毛根が完全に死滅しているわけではなく、休んでいる状態や弱っている状態であることが多いためです。

適切な治療と生活習慣の改善によってヘアサイクルを正常に戻すことで、以前のようなボリュームを取り戻すことが期待できます。根気強いケアが必要です。

シャンプーを変えるだけで治りますか?

シャンプーの変更だけで根本的に治ることは難しいですが、頭皮環境を整えるためには重要です。洗浄力が強すぎるシャンプーは頭皮を乾燥させ、バリア機能を低下させます。

アミノ酸系などの低刺激なシャンプーを使うことで、頭皮への負担を減らすことができます。治療や育毛剤の効果が出やすい土台を作るという意味で有効です。

白髪染めやパーマは続けても大丈夫ですか?

頭皮に炎症が起きていなければ、完全に禁止する必要はありません。ただし、頻度を減らすなどの配慮は大切です。

薬剤は頭皮にとって刺激となるため、できるだけ頭皮につかないように塗布してもらうと良いでしょう。天然成分由来のカラー剤を選ぶのも一つの手です。

ストレス発散をすれば髪はすぐに生えますか?

ストレスが解消されたからといって、翌日に髪が生えるわけではありません。一度乱れたヘアサイクルが正常に戻るには時間がかかります。

新しい髪が成長して目に見える長さになるまでには、最低でも3ヶ月から半年程度が必要です。焦らず、長い目で見てケアを継続することが一番の近道となります。

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